2015-06-15

消化器

気ままの雑記から習う

消化管

消化器は、「消化」「吸収」「排泄」の働きを担う器官です。

消化
口から取り入れた食物を、体内の各組織が機能できる「形体(性質)」に変換(分解)する。

吸収
消化された「形体」を取り込む。

排泄
未消化・未吸収となった「形体」を、肛門から体外に出す。

前回にお話をしましたように、不要なものを排泄し、必要なものを吸収する流れがスムーズであることは、健康(体内の各組織がその機能を発揮すること)の土台であることでしょう。

前回の記事はこちら

雑記66

ということで、その一連の流れを考察してみます。

1.消化管

消化管は、入り口の「口」から「口腔」→「咽頭」→「食道」→「胃」→「小腸」→「大腸」、そして出口の「肛門」までと機能解剖的に名付けられた部位からなるヒトツナガリの管(くだ)です。くねくねした腸を真っ直ぐに伸ばすと下図のようになり、伸長は10mほどになります。

主な役割

消化管

口腔

① 認識する
視覚、嗅覚により認識した食物を、嗅覚、味覚(甘味、塩見、酸味、苦味、旨味など)、触覚(歯ごたえ、舌触り、辛み、渋みなど)により認識する。
※ 視覚・嗅覚認識をすると、唾液や胃液も分泌されはじめる。

② 微小化する
食物を歯で噛み砕くことにより、咽頭を通り抜けやすく胃で消化しやすい「形体」にする。

③ 消化する
食物を唾液に含まれる消化成分と混ぜることにより、胃で消化しやすい「形体」にする。
※ デンプン質を消化する。

④ 粘液化する
食物を唾液に含まれる粘液成分と混ぜることにより、咽頭を通り抜けやすい「形体」にする。

⑤ 殺菌する
食物を唾液に含まれる殺菌成分と混ぜることにより、殺菌する。

⑥ 咽頭へ運ぶ
噛み砕かれ唾液と混ぜられた「形体」を、飲み込むことにより少量ずつ咽頭へ運ぶ。

咽頭

◎ 食道へ運ぶ
口腔から運ばれてきた「形体」を、嚥下反射により食道へ運ぶ。

食道

◎ 胃へ運ぶ
咽頭から運ばれてきた「形体」を、蠕動運動により胃へ運ぶ。

① 微細化する
食道から運ばれてきた「形体」を、蠕動運動により撹拌しながら胃液(消化液)と混ぜることにより、小腸で消化・吸収しやすい「形体」にする。

② 消化する
食道から運ばれてきた「形体」を消化することにより、小腸で消化・吸収しやすいようにする。
※ 主にタンパク質を消化する。

③ 殺菌する
食道から運ばれてきた「形体」を、胃液(消化液)と混ぜることにより殺菌する。

④ 小腸へ運ぶ
微細化と消化を終えた「形体」を、蠕動運動により少量ずつ小腸へ運ぶ。

小腸 - 十二指腸

① 消化する
胃から運ばれてきた「形体」を、腸液(消化液)と胆汁(胆嚢からの乳化液)、膵液(膵臓からの消化液)と混ぜて消化することにより、空腸・回腸で消化・吸収しやすいようにする。

② 空腸へ運ぶ
消化した「形体」を、蠕動運動により空腸へ運ぶ。

小腸 - 空腸・回腸

① 消化する
十二指腸から運ばれてきた「形体」を、蠕動運動により撹拌しながら腸液(消化液)と混ぜることにより消化する。

② 吸収する
吸収できる「形体」を吸収する。
※「形体」の多くは小腸で吸収され、血液によって肝臓→心臓→各組織へ、十二指腸で乳化された脂質は、リンパ管→心臓→各組織へと運ばれる。

③ 殺菌する
免疫細胞が、有害な細菌を排除する。

④ 大腸へ運ぶ
未消化・未吸収の「形体」を、蠕動運動により大腸へ運ぶ。

大腸 ー 虫垂(免疫組織)

① 細菌を排除する
免疫細胞が有害な細菌を排除する。

② 細菌を放出する
大腸に住む細菌が下痢などで不在になったときに、ストックしていた細菌を放ち、今までと同様の腸内環境にする。

大腸 - 上行結腸 ~ 直腸

① 消化される
小腸から運ばれてきた未消化・未吸収の「形体」が、細菌により消化される。

② 吸収する
小腸から運ばれてきた吸収不可だった「形体」と、細菌により消化された「形体」を吸収する。
※ 吸収された「形体」は、血液によって肝臓→心臓→各組織へと運ばれる。

③ 糞便を作る
未消化・未吸収の「形体」を、上行結腸→横行結腸→下行結腸→S字結腸→直腸と移動させながら、余計な水分を吸収し排泄しやすい「形体」である糞便を作る。

④ 糞便を排泄する準備
直腸に糞便が溜まると、蠕動運動が起こり、内肛門括約筋がゆるみ排泄の準備をする。

⑤ 糞便を排泄する
意志で外肛門括約筋をゆるめると、排泄する。

2.第二の脳?

消化管(食道から直腸まで)における分泌制御、運動制御、血流制御は、主に腸内の神経システムにより行われています。それはつまり、脳神経系に制御されることなく、腸神経系に制御されているということです。また、脳内で作られる神経伝達物質(心身に様々な影響を与える物質)のほとんどは、腸内でも作られるそうです。

腸神経系は、各組織が機能するためには欠くことのできない自立した独自の制御システムであり、「第二の脳」とも称されています。

3.原始の脳?

「第二の脳」と称される腸神経系ではありますが、生命は「栄養を摂取するための器官」から多能化(適応化)していったと推測できます。

その「栄養を摂取するための器官」は「管(くだ)」の形体を選択し、より大きな標的(栄養源)から栄養を摂取できるように「出入り口」「消化能力」「運動能力(筋肉:神経伝達・血液循環)」を派生したり、標的や外敵を発見できるように「触覚能力」を派生したり、より素早く栄養を代謝できるように「心肺能力(肺、心臓)」を派生したり、より素早く目的を達成できるように「移動能力」を派生したり、より素早く標的や外敵を発見できるように「視覚能力」「聴覚能力」「嗅覚」を派生し、これらの様々な知覚情報を神経的に処理する「脳神経系」を派生したり・・・。

腸神経系は私たち人類にとって根源的な器官であり、それは「原始の脳」とでもいえるかもしれません。

4.腸内細菌

1.腸内細菌と免疫力

肉体の外界と内界を隔てる広大な壁面でもある消化管は、人体最大の免疫システムでもあります。咽頭は免疫細胞に囲まれていますし、腸内には全免疫細胞の6~8割が監視しているようです。そして各個人の免疫力に大きな影響を与えているのが腸内細菌のようだぞ、ということなのです。

医療現場では糞便移植(腸内細菌移植)も行われ、その成果も出ているようです。また、南極(無菌状態)で生まれた赤ちゃんは、遅くとも自国へ帰る途中で命を落とすことが確認されています。それは、細菌を保有していないため、有害な細菌の侵入に対抗できないためだと考えられています。つまり身体各部位に住む常在菌(腸内だけではなく)は、新たに侵入してくる細菌を排除する働きもしているということです。

2.腸内細菌と消火力

腸内(特に回腸から大腸)には「腸内フローラ(お花畑)」と称される細菌叢(100〜1000種類、100兆以上、1〜2㎏)が住んでいるといわれています。そして各個人の消化力に大きな影響を与えているのが腸内細菌のようだぞ、ということなのです。

たとえば、赤ちゃんは大人よりも、母乳の消化を促す細菌の遺伝子が多いようです。肥満者は標準体重者よりも細菌の種類が少なく、炭水化物の消化を促す細菌の遺伝子に偏っていたりするようです。さらにパラセタモール(鎮痛剤)を飲むと具合が悪くなる人は、肝臓が鎮痛剤の成分を分解するのを妨げる物質を出す腸内細菌がいたりするようです。

また、コアラの赤ちゃんの離乳食は、母親の糞便であるようですが、それはコアラにとってユーカリの味を知るとともに、ユーカリの消化を促す細菌を摂取するためだと考えられています。同じようにパンダの赤ちゃんも、母親の糞便を食べ、笹の消化を促す細菌を摂取していると考えられています。

人間の赤ちゃんはといえば、膣内フローラを通り抜けるとき(出産時)に、基本細菌(乳酸菌など)を摂取します。そしてその後も、環境に合わせて様々なものに触れながら細菌を摂取していき、3歳頃には腸内フローラも完成するとのことです。海外で下痢をする人としない人がいるのも、3歳までにどのような常在菌を保有したかに依存していそうですね。

3.腸内細菌と体質

このように腸内細菌は、人体で一大事である免疫力にも消火力にも大きく影響を与えています。血液型、肥満性、不耐性、アレルギー性など各個人の体質と深く関係していると言い変えることもできるでしょうか。

私たちヒトは、細菌との共生なくして生きてはいけないというこであり、食事に関していえば、それは「何を食べるか?」だけではなく、「誰(どんな体質の人?≒どんな消化能力の人?≒どんな細菌を保有している人?)が、何を食べるか?」が大切であるようだぞ、ということなのです。

5.腸内環境と脳内環境

腸は近年、体質的な関係だけでなく、精神的(脳)との関係にも注目が集まっているようです。腸内環境が脳内環境(心身の状態)に大きな影響を与えていることが、多くの研究者の間でも認識され始めたということでしょう。

たとえば、マウスを使った実験では、腸内細菌を入れ替えたら、行動特性まで入れ替わったという結果や、腸内環境を変えたら、長く泳ぎ続けたり、ストレスホルモンの量も減り、学習能力も上がったという結果も出ています。しかし迷走神経(腸と脳をつなぐ神経)を切断すると元に戻ったことから、迷走神経を通して腸内環境が脳内環境に影響を与えていることが推測されています。

また近年、うつ病との関係でも注目を集めている神経伝達物質にセロトニンがあります。セロトニンは他の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンなどの働き(心身の興奮)を抑制したり、自律神経の働き(心身の興奮と鎮静)を制御したりなど、心身を安定させる働きがあると考えられており、「幸せ物質」と称されています。

脳内で作られる神経伝達物質のほとんどは、腸内でも作られるというように、セロトニンのほとんどは脳内ではなく、腸内で作られ腸内で働いていることが分かっています。そして、このセロトニンの原料を腸内細菌が作っていることも分かっています。その原料が脳内に運ばれ、脳内でセロトニンが作られてもいるのです。

つまり、私たち人類にとって根源的な「腸内環境」こそが、派生的な「脳内環境」に影響を与え、心身の状態を左右しているのかもしれないぞ、ということなのです。

6.考察

さて、「消化」「吸収」「排泄」のサイクルがスムーズに働くためには様々な因子が関係し合っていると考えられますが、食物に関しては次の5つの条件がポイントといえるでしょう。

5つのポイント
  1. 栄養を含む
  2. 消化しやすい
  3. 吸収がゆっくり
  4. 運びやすい
  5. 各個人の腸内細菌環境を調える(プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックス)

プロバイオティクス:

善玉菌の摂取により、腸内細菌環境を調える

プレバイオティクス:

善玉菌の生育により、腸内細菌環境を調える

バイオジェニックス:

乳酸菌生産物質(善玉菌が腸内で生産する物質)の摂取により、体内環境および腸内細菌環境を調える

そして、これらの条件を満たす食物の「質と量と時間と方法」が大切でしょう。

  1. 何を食べるか?
  2. どれだけ食べるか?
  3. いつ食べるか?
  4. どのように食べるか?(食べ合わせ、所要時間、回数、姿勢など)

次に食物以外のことで、「排泄」をスムーズにするポイントがあります。

運びやすい(肛門に)

そして、この条件を満たす「時間と方法」が大切でしょう。

  1. いつ出すか?(肛門に運びやすい時間)
  2. どのように出すか?(肛門に運びやすい姿勢)

これぞ糞便を運びやすい↓理に合った姿勢です。
ウンチングスタイル byマリオ
ウンチングスタイル byマリオ

古来からの和式スタイルは、直腸が排泄に適した形になります。洋式便所の両サイドに、足を乗せる高台を置くと、マリオ君のようにしゃがめます。この姿勢だと、確かにするするーと出やすさを実感します。

これも非常に大切なことです!

7.提案

人類(自然性)に合わせたライフスタイル、各人の体質(自然性)に合わせたライフスタイルを発見していきましょう。


次の雑記

雑記68

参考にした文献

おしゃべりな腸

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■著 者:ジュリア・エンダース
■訳 者:岡本 朋子(おかもと・ともこ)
    :長谷川 圭(はせがわ・けい)
■発売日:2015/5/25
■値 段:1728(税込)