四行法3.印相
3-001
山や林のある大地のすべてを支えているものが蛇の主神アナンタであるように、すべてのヨガ行法を維持しているものはクンダリニーである。
3-002
ヨガ教師の恵みによって、眠っていたクンダリニーが目覚めたとき、そのときにこそすべての蓮華と結節とは突き破られる。
3-003
すると、障害物のなくなった中央気道は生気にとって、通行に便利な王道となる。そのとき、心はその対象から解放され、時間からの超越に成功する。
3-005
それ故、梵穴(中央気道)の入口に眠っている女神(元気)を何とかして目覚めさせるために、行者は各種の印相の修練を積まねばならない。。
3-122
7万2千本の気道の汚物を清掃するには、クンダリニーの修行以外に、どこにあろうか。
3-123
中央気道は、ヨガ行者が体位、調気、印相などを厳格に修習することによって真っ直ぐになる。
『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』
印相:ムドラー
生気の制御を中心とする修行法である。原語である『mudrā』は、「印、封印、印契」などを示している。中央気道の入口で休眠しているとされる元気の封印を解き、それを覚醒する行法である。
教典は主に、11の印相を示している。それは次の11である。
- 偉大の印相 …… とある坐位で、三重の締付を行う印相
- 偉大な締付の印相 …… とある坐位で、三重の締付を行う印相
- 偉大な知識の印相 …… 偉大な
知識締付の印相に加え、尻を上げてから落とす印相 - 虚空の歩行の印相 …… 舌の巻き入れを行う印相
- 上昇の締付 …… 腹周辺の締付を行う印相
- 根の締付 …… 肛門周辺の締付を行う印相
- 網の締付 …… 喉周辺の締付を行う印相
- 三重の締付 …… ①②③(腹・肛門・喉周辺)の同時締付を行う印相
- 逆転の動作 …… 逆転する体位を行う印相
- 金剛の印相 …… 射精後、精液の吸い上げを行う印相
- 女神の刺激の印相 …… 元気の刺激を行う印相
これらの印相の中核となるのは、主に三重の締付である。
印相の意図は、元来身体に備わっている生命力を活性し、元気を取り戻すことである。
ここでは、三重の締付に加え、直接関係のある上昇の締付、根の締付、網の締付の4つの印相の解説をすることにし、それ以外の実践方法の詳細は割愛する。
元気:クンダリニー
元気とは「生命力、根源力」などを示している。原語である『kuṇḍalī/kuṇḍalinī』は「とぐろを巻いた女性」を示している。元気は、中央気道の入口(骨盤底)、あるいは下腹あたりに、とぐろ(kuṇḍala クンダラ)を巻いた蛇(bhujaṅga)のように眠っているとされ、「雌蛇」を示す『bhujaṅgī ブジャンギー』や、「女神、力」などを示し『śakti シャクティ』とも呼ばれている。
ハタ・ヨガの根本的意図とは、眠っている元気を目覚めさせ、その元気が中央気道を上昇するよう促すことである。その直接的方法が各種の印相行法である。
注意
※ ちから技にならないこと