2020-11-12

三重の締付(バンダ・トラヤ)

ハタ・ヨガを一から習う

前回のレッスンでは、ハタ・ヨガを実践するための大前提として、ハタ・ヨガの根本操作ともいえる「締付(しめつけ)」とは何か? についてのお話をしました。今回はその締付の基本となる三重の締付について習っていきましょう。

前回のレッスンはこちら

レッスン2

1.締付と姿勢

1−1.準備の形式(かた)

締付を極(き)めるために「姿勢が調っている」ことは大前提です。つまり、勢力が「末端 ⇄ 中心」を滞ることなく力強く流れることが必要条件です。ここでは、締付姿勢に移動するその前に、あらかじめ末端である「①脚 ②腕 ③頭」の3箇所の形体を操作し、準備をしておきます。

  1. 脚:足の小指を反り、踵底内側が押し出される形体
  2. 腕:手の小指を握り、掌底外側が押し出される形体
  3. 頭:口角が僅かに上がるように口を閉じ、眉毛が僅かに下がる形体

① 脚の形体

脚の形体
自然体位

脚の形体
準備体位

解説

足の小指を反ることにより、踵底内側が外側に押し出される流れが生じます。それはつまり「踵底内側 ⇄ 下腹部(中心)」の流れが生じるということです。
※ 実際には他の指もついていきます

② 腕の形体

腕の形体
自然体位

腕の形体
準備体位

解説

手の小指を握ることにより、掌底外側が外側に押し出される流れが生じます。それはつまり「掌底外側 ⇄ 中胸部 ⇄ 下腹部(中心)」の流れが生じるということです。
※ 実際には他の指(親指以外)もついていきます

③ 頭の形体

頭の形体
自然体位

頭の形体
準備体位

解説

いわゆる「真面目顔、真剣顔」あるいは「やるぞっ!」といったときの表情をすることにより、顎先が引かれ頭頂が押し出される流れが生じます。それはつまり「頭頂 ⇄ 中胸部 ⇄ 下腹部」の勢力の流れが生じるということです。

以上を踏まえて準備姿勢の全身像は以下のようになります。

全身の形体

全身の形体
自然体位

全身の形体
準備体位

1ー2.締付の形式(かた)

締付の根本的操作である「上昇の締付(腹部の引き上げ)」に伴い、準備体位から締付体位への移動していきます。

① 締付の形式(立位)

締付の形式(立位)
準備体位

締付体位(立位)
締付体位

② 締付の形式(坐位)

締付の形式(坐位
準備体位

締付体位(坐位)
締付体位

解説

腹部を引き上げようとすると同時に、鼠蹊窩、腋窩、盆窪、眉毛などが自然と方向付きながら締め付けられ、全身に自然と締付が起こります。

注意

もちろん肛門周辺、喉周辺もまた自然と締付が起こります。決して部分的に肛門を締め付ようとか、喉を締め付ようとかしてはいけません。

5つの要所
  1. 鳩 尾:上に方向づき締め付けられていく
  2. 鼠蹊窩:下に方向づき締め付けられていく
  3. 腋 窩:上に方向づき締め付けられていく
  4. 盆 窪:上に方向づき締め付けられていく
  5. 眉 毛:下に方向づき締め付けられていく
※ 鳩 尾(みぞおち):上腹部にあるくぼみ
※ 鼠蹊窩(そけいか):脚の付け根のくぼみ
※ 腋 窩(えきか) :腕の付け根のくぼみ
※ 盆 窪(ぼんくぼ):頭の付け根のくぼみ

注意

これら5つの方向付けが重要であっても、決して部分的操作感覚はありません。締付が極まるときには必ず、全体的操作感覚があります。

ハタ・ヨガの体位(アーサナ)で締付をするときであっても、締付が極まっているのなら、これら5つの要所が各体位に合わせて自然に協力し合うように方向づきます。

2.締付と呼吸

上昇の締付(腹部の引き上げ)は、吸う息(胸式)に伴って自然と起こるものですから、呼吸と合わせることによってより無理なく行うことができます。

2−1.締付の3過程

● 締付と呼吸:締付の3過程

締付をより快適に、より効率的に行うためには、伸びと同様の呼吸に伴わせるべきである。主として次の3つの過程に分類できる。

  1. 吸息に伴わせ、適度に徐々に締付を「きゅう~~~」と強めていく
  2. 止息に伴わせ、適度に一層に締付を「ぎゅう~~~」と極めていく
  3. 呼息に伴わせ、適度に徐々に締付を「ほわぁ~~~」と緩めていく

※ 吸息は、吸い切らなくてもよい。締付が極まるかどうかが重要である。
※ 呼息は、声帯を緩めていく結果として起こるのであり、吐こうとはしないこと。

『ハタ・ヨガの修行法』P21 締付と脱力より
締付と呼吸

  1. 吸息に伴わせ、5つの要所の方向付けを強めていく
  2. 止息に伴わせ、5つの要点の方向付けを極めていく(より強めていく)
  3. 呼吸に伴わせ、5つの要点の方向付けを緩めていく

ハタ・ヨガの体位(アーサナ)で締付をするときは、前屈系、後屈系、側屈系、捻転系などどの体位であっても、基本的にはこのパターンで行います。

2ー2.締付と止息と発声

● 締付と止息と発声

締付を極めている最中は、止息が起こるか止息気味となる。何故なら、締付には声帯の締付も伴うためである。気息は吐く方へ流れようとするが、閉じた声帯に堰き止められているため、外に出ていきにくい状態にある。

また、伸びのときに「ゔ~~~~ん」などといった声と共に息が少し洩れるように、締付を極めている最中にも、実際に「ゔ~~~~ん」などと声が出るか、心の中で(ゔ~~~~ん)などと声が出るかのどちらかが適切である。そして締付を極めた後、声帯の隙間から息が洩れていく。このとき、口から息が出ていく場合には「あ"ぁぁ~~~」などと声が出るが、鼻から息が出ていく場合には「ゔ~~~~ん」などと声が出る。

『ハタ・ヨガの修行法』P19 締付と脱力より
発声もまた締付全体の一部であって、人為的に起こす行為ではなく、それは自然発生的に起こる行為です。自然的には、締付時の「う"んんん〜」も、弛緩時の「あ"ぁぁぁ〜」も起こってしまうものです。

今回のレッスンでは、「締付」の実践方法について習いました。次回は締付を上手く極めるための「コツ」についてのお話です。


次のレッスン

レッスン4

参考になりそうな記事

レッスン7
雑記76