ヨガ習学の後に
習学の後に
この本の初めに書かれてある言葉を覚えているでしょうか。この言葉は、ブラジルの作家であるパウロ・コエーリョ氏による物語『アルケミスト-夢を旅した少年』の中に登場する世界で最も賢い男が、幸福の秘密を学びに旅してきた若者に語った台詞です。ここでの「スプーンの油」とは、ティースプーンに垂らした二滴の油のことです。若者はそのスプーンを渡され、油をこぼさずに宮殿を歩きまわるよう指示されます。初め若者は、油だけに関心が向き、何も見ませんでした。次に若者は、宮殿の観賞に関心が向き、油のことは忘れていました。
さて、この言葉の真意とは……?
ところで、この物語の主人公の少年は、朽ち果てた教会に生えたいちじくの木の下で一夜を過ごすと、一週間前に見た夢と同じ夢を見ます。それは、子供にエジプトのピラミッドまで連れて行かれ、「あなたがここに来れば、隠された宝物を発見できるよ」と言われる夢でした。少年は年老いた王様に背中を押してもらい、隠された宝物を探しにエジプトへ行くことを決心します。少年は年老いた王様の助言に従い、"前兆"の語る言葉を受け取り、多くの人々や困難から学び、ようやくピラミッドに辿り着きます。そこで少年は、はち切れんばかりの喜びと共に笑い出します。そうついに宝物のありかを知ったのです。
さて、その場所とは……?
また、その結末の真意とは……?
さて、ヨガの八支則とは、修習と離欲により、心の散動性を減退させ、心の不動性を増進させていく心の制御法です。言葉を変えるなら、心の停滞質と激動質を減退させ、心の純粋質を増進させていく心の浄化法です。また、例えるならそれは、独楽回しの練習のようなものです。最初の内は勢いもなく軸もぶれ、のろのろふらふらと散動して回ったり、勢いはあるけど軸はぶれ荒々しくあちらこちらと散動して回ったりしますが、慣れてくると勢いもあり軸も通るようになり、1か所に静止し不動のごとく回るようになるのです。
誠実さが、心を慣れさせ、心に勢いと軸を生み出し、私たちを目的へと向かわせていくことでしょう。そして最後には、宝のありかを知ったときの少年のように、私たち自身の努力を笑う日が来ることでしょう。
2018.5.5 尾山 広平