ハタ・ヨガ
1-01
ハタ・ヨガの道術を太初に示したもうた祖神シヴァに帰命したてまつる。ハタ・ヨガは、高遠なヨガに登らんとするものにとって、すばらしい階段に相当する。
1-02
ヨガ行者スヴァートマーラーマは自分の尊師なるナータを礼拝してから、ひとえに人々をラージャ・ヨガに導かんがために、ハタ・ヨガの教えを説く。
1-03
異説がいり乱れる闇に迷うてラージャ・ヨガを知らない人々のために、慈悲深いスヴァートマーラーマ道士はハタ・ヨガの灯明(プラディーピカー)をかかげる。
1-67
様々な体位、保気(調気)、その他のすぐれた諸所作など、ハタ・ヨガの実習に関するすべてのことは、その結果たるラージャ・ヨガに達するまで修行しなければならない。
4-79
ラージャ・ヨガを知らないで、もっぱらハタ・ヨガだけを行ずる人たちのことを、我は、努力の効果を逸した人たちだというのである。
4-103
ハタとラヤの方法は、全てラージャ・ヨガの完成のためにある。ラージャ・ヨガに熟達した人は死を克服している。
『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』
ハタ・ヨガ
ハタ・ヨガとは、ラージャ・ヨガへ至るための身体的修行法である。教典『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』には、主として身体的操作である体位行法、調気行法、印相行法の3つに、心意的操作である瞑想行法を加えた4つの修行段階が説かれている。
それは月気道と太陽気道に流れる生気を減退させていき、中央気道に流れる生気を増進していく行法である。別の言葉で表現するなら、心気の作用から停滞質と激動質を減退させていき、純粋質(均衡質)を増進していく行法であり、もっと解りやすく言うなら、心身のバランスを図る方法である。
最終的には心気の作用の生滅(ラヤ)へ至ることにより、その目的を成就しようとするものである。
ラージャ・ヨガ
ヨガの成就を示している。ラージャの原語である『Raja』は、「王、王様、貴族」などを示している。つまりラージャ・ヨガとは、直訳するなら「王のヨガ」となり、一般的には「王道ヨガ、瞑想ヨガ」などとも訳されているが、それは単に「ヨガ」を示している(ヨガという言葉はその成就をも含んでいる)。
それは心の作用を消滅させ、真実を悟ることである。観念(名前と色形)から解放されている故に、生まれも死にもせず、何にも依存せず独立し、純粋無垢な唯一の実在として在る境地である。
ヨガに至るために、心気を停滞質に傾ける月気道と、心気を激動質に傾ける太陽気道への生気の流れを阻止し、心気を純粋質に均す中央気道に生気を導くことにより心気の作用を止滅しようとすることが、ハタ・ヨガの意図であると言えるでしょう。