【印相②】根の締付
3-061
カカトで会陰部を圧してコウモンを収縮し、アパーナ生気を情報へ引き上げるならば、それは根の締付と呼ばれる印相である。
3-062
コウモンを収縮することによって、いるも下降する傾向にあるアパーナ生気を力づくで上昇させる。これがヨガ行者たちによって根の締付と呼ばれるものである。
3-063
カカトをもってコウモンを圧して、アパーナ生気が中央気道のなかを上昇するように、繰り返し繰り返し、力を込めて気を引き締める。
3-064
プラーナ生気とアパーナ生気、ナーダとビンドゥの2つはこの根の締付の力で合一し、ヨガ行の完成をもたらす。これについては疑いはない。
3-065
平素より根の締付を行ずるならば、アパーナ生気とプラーナ生気の合一が成り、大小便が減り、年老いていても青年になる。
3-066
アパーナ生気が上昇し始めて、火環に達すると、そこの火の穂先がアパーナ生気に煽られて長く伸びる。
3-067
それから、火とアパーナの2つは、本来熱をもったプラーナ生気に合する。その結果、かの体内に生じた焔は極度に明るく輝く。
3-068
この焔で熱せられて、今まで眠っていたクンダリニーが目を覚まし、杖で打たれた雌蛇のようにシュッと息を吐いて直立の姿勢をとる。
3-069
それから、聖なる管である中央気道の入口に入り、だんだんその内部へ進みいる。だから、ヨガ行者たちは、いつもこの根の締付を行ずるがよい。
『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』
② 根の締付:ムーラ・バンダ
肛門周辺の締付を行う印相である。
根の締付の意図は、三重の締付を感得することである。
三重の締付
根の締付は、上昇の締付の補助として自然と起こるものである。部分的に肛門を収縮させたところで、衝突が起こるだけで快感は生じ得ない。しかし肛門を収縮させた上で、上昇の締付を行うことで初めて快感は生じる。何故なら、上昇の締付により全身が結びつき、調和が起こるからである。
もしも上昇の締付をしたつもりでも、根の締付が起っていないとしたら、それは締付が極まっていないということの証拠である。
想像の活用
肛門周辺は、生気が流入するための入口であり、また、生気が降下しないための下蓋でもあるとイメージするとよい。
中央気道をストローに例えるなら、ストローの中を上昇して行った液体が降下して入口から流出しないように、入り口付近をぎゅうと指で摘まんでおくようなイメージである。
秘訣は、吸引上昇した生気が、降下して入口から漏れて流出しないように、穏やかうに締付けておくイメージをもつこと。
名前と幻想
根の締付とは、三重の締付の際に自然と起こるものであり、極所局所的に捉えたときの名前が根の締付であり、全域的に捉えたときの名前が三重の締付である。根の締付とは、単に言葉上にだけある幻想に過ぎない。
全体一致の原理に基づき、無理のない印相を修習していきましょう。