【体位⑬】死骸の体位

ハタ・ヨガを一から習う

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死骸のような格好で仰臥するのが死骸の体位である。この体位は、ハタ・ヨガの実習からくる疲労を取り去り、心のリラックスをもたらす。

『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』

死骸の体位

⑬ 死骸の体位:シャヴァ・アーサナ

仰向けで脱力し、全身の非刺激を強化する体位である。あらゆる行為を放棄し、心身を休めることが特徴である。

死骸の体位の意図は、休息することにより、全身のバランスを図ることである。また、身体的な行為の放棄、ひいては心意的な行為の放棄により、身体も心意も何もしようとしない状態へ導くことである。また、観察者としての自己を感得することである。

1.脱力過程

死骸の体位

1.仰臥する
2.脚が腑抜けるように脚を位置どる
3.腕が腑抜けるように腕を位置どる
4.首が腑抜けるように頭を位置どり、目をつぶる
5.休息する

伸び、欠伸、ため息、揺するなど、心身が落ち着くよう導いてみましょう。

記憶を頼りにして形体を意図することなく、無意図に落ち着く姿勢を見つけてみましょう。

息抜きすることが脱力を深めるポイントです。呼息では鼻息が「ふっー」と立つほどにしっかりと呼吸を抜いてみましょう。

2.体性感覚の観察過程

適当に(5分ほど)、次のような順序で身体の内側から皮膚を見るかのように、あるいは内側から光を当てているかのように、全身を観察していくとよい。縮み、張り、重だるさ、冷たあ、熱さ、痛みなど様々な感覚を意識する。

死骸の体位

1.下体周辺

骨盤周り、脚の付根周り、太腿周り、膝周り、下腿周り、足首周り、足周り

2.腰周辺

3.上体周辺

胸郭周り、腕の付根周り、上腕周り、肘周り、前腕周り、手首周り、手周り

4.首周辺

5.頭周辺

顎周り、口周り、鼻周り、頬周り、耳周り、目周り、額回り、側頭周り、後頭周り、頭頂周り

6.全身

吸息に伴い表側がふわ〜っと浮揚、拡散していくようにイメージし、その解放感を味わう。呼息に伴い裏側がずし〜っと沈殿、溶解していくようにイメージし、その脱力感を味わう。呼息が終わった後は、そのまま止息しておき、休息、静寂、平安、脱力の極みを味わう。適度に行う(5~15分ほど)。

距離をとることが観察を深めるポイントです。観察者としての「自己」と、観察の対象としての「感覚」との間にしっかりと距離をとってみましょう。

3.全対象の観察(気づき)

何もしないようにしようともせず、意識の内に現れる全てのすべてを対象として、身体(感覚:体性感覚)と、心意(思想:思考想像)のあるがままを観察する。適度に行う(5~15分ほど)。

内と外を分別しないことが観察を深めるポイントです。例えば皮膚の外側から聞こえてくる音も、皮膚の内側から聞こえてくる音も、どちらも意識の内に現れる「音」です。


全てのすべてを単なる対象として、平等に観察してみましょう。

注意

死骸の体位を終えたなら、始めのように、伸び、欠伸、ため息、揺するなど身体感覚を目覚めさせてから、ゆっくりと起き上がること。

2.その他の脱力体位

仰臥状態が落ち着かなければ、伏臥、横臥、その他の状態で落ち着く姿勢を見つけてみること。

1.ワニの体位

ワニの体位
ワニの体位

うつ伏せ状態のシンプルな脱力体位です。

ワニの体位
ワニの体位

うつ伏せ姿勢も落ち着かない場合は、左右落ち着く側の膝を曲げて横向きなると落ち着くかもしれません。

ワニの体位
ワニの体位

うつ伏せ姿勢でも足向き、足幅を変えてみると落ち着くかもしれません。

2.子供の体位

子供の体位
子供の体位

軽く前屈するような姿勢になると落ち着くかもしれません。

お尻を少し上げてみたり、顔を横へ向けてみたり、両手を額の下に入れたりなど、落ち着く姿勢を見つけてみましょう。

3.椅子での脱力体位

椅子坐の脱力体位

背をもたれてみると落ち着くかもしれません。

注意

一般的な形体のように足を腰幅や肩幅にとろうとしたり、手のひらを天井に向けていては、脱力をすることとぶつかり合うため脱力は極まらない。

人為的な制御を手放すことが脱力(死骸の体位)の要点である。

活動にばかり関心を向ける激動質(ラジャス)、休息にばかり関心を向ける停滞質(タマス)の2つを避けて、活動と休息のバランスを図る純粋質(サットワ)であることがヨガに取り組む上で大切なことである。

体位行法の最後には、少し長めに脱力体位をとり、心身を沈静させて、疲労回復を促していくこと。

今を重要視することが脱力を深めるポイントです。未来に効果を期待して、過去の記憶(思想)を頼った姿勢を形作るのではなく、今の感覚を頼りに姿勢を形作ってみましょう。

過去(past)、未来(future)ではなく、今(Now)を重要視すること。過去(起こったこと)と未来(起こること)を重要視せず、関心を向けないこと。ただ、今在る気づきのみを重要視し、関心を向けること。これが、ヨガ行法の中核、離欲(無関心)と修習(関心)の本質である。


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